- 1. エアコン(空調機)・冷凍機が冷えない原因
- 1-1. 冷えない原因7種
- 2. 【原因①】室内機・室外機の汚れ
- 2-1. 【解説】室内機が冷風を出せない/室外機で熱を放出できない
- 2-2. 【傾向】室内機から異音がする/室外機が見た目に汚れている
- 2-3. 【対策】サービス会社にクリーニングを依頼する
- 3. 【原因②】冷媒量の不足
- 3-1. 【解説】機器が本気を出せない
- 3-2. 【傾向】設備の老朽化/外気温が高いほど冷えない
- 3-3. 【対策】修理を依頼する/冷媒追加チャージを依頼する
- 4. 【原因③】外気温の上昇
- 4-1. 【解説】室外機が冷媒の熱を十分放出できない
- 4-2. 【傾向】直射日光/コンクリート
- 4-3. 【対策】散水装置/外付け熱交換器
- 5. 【原因④】室外機の排熱の再吸入
- 5-1 【解説】室外機で冷媒の熱を十分放出できない
- 5-2. 【傾向】吹出口からの風の流れの先に吸気口がある/室外機周辺の風通しが悪い
- 5-3. 【対策】散水装置/外付け熱交換器/送風機/風のコントロール
- 6. 【原因⑤】室内機への過負荷
- 6-1.【解説】常に室外機がフル稼働を迫られる
- 6-2.【傾向】熱源となる機器の存在/外気の侵入/広い&高い
- 6-3.【対策】散水装置/外付け熱交換器
- 7 【原因⑥】機器の能力不足
- 8. 【原因⑦】圧縮機やセンサーの劣化
- 8-1. 【解説】正常に運転できなくなる
- 9. まとめ
- 9-1. あくまで参考として
1. エアコン(空調機)・冷凍機が冷えない原因
1-1. 冷えない原因7種
エアコン(空調機)や冷凍機の冷えが悪いとお悩みの事業者様が増えています。
これは夏場の気温が上昇し、空調機や冷凍機にとって過酷な環境になっていることが背景としてありますが、直接の原因は様々です。
さらに夏季であっても気温の穏やかな日であれば冷えに問題がないことも多く、解決の難しさ(原因の特定)に拍車を掛けています。
本コラムでは以下の冷えない原因7種類について、詳細の解説や当てはまる際の傾向、対策法までご紹介します。
①室内機・室外機の汚れ …2章
②冷媒量の不足 …3章
③室外機周辺の高温 …4章
④室外機の排熱の再吸入 …5章
⑤室内機への過負荷 …6章
⑥機器の能力不足 …7章
⑦圧縮機やセンサーの劣化 …8章
なおこの中には明らかに現在の状況と無関係なものもあると思いますが、後の章には前の章でご説明した内容を前提としている部分もあるため、ひととおり目を通していただくことをお勧めいたします。
本コラムは原因を断定、解決を保障するものではありませんが、今後の参考となれば幸いです。
また本コラムはホームエアコンを想定して執筆してはおりませんが、一部参考にはなると思います。
2. 【原因①】室内機・室外機の汚れ
2-1. 【解説】室内機が冷風を出せない/室外機で熱を放出できない
最初は室内機・室外機の汚れです。導入以来一度もクリーニングをしていない現場は珍しくありません。
ですが汚れも冷えと無関係ではなく、それを説明するためにエアコン・冷凍機の仕組みについて簡単にお話します。
エアコン・冷凍機の運転中は、室内機と室外機の間を冷媒が循環しています。
冷媒は熱の運搬役を担っており、冷房運転・冷凍冷蔵運転においては室内機で熱を受け取り、受け取った熱を室外機にて放出しています。
この熱の受け取りや放出は熱交換と呼ばれ、その役割を果たす機材を熱交換器(空冷式)と呼びます。
空調機・冷機の室内機と室外機のいずれにも熱交換器が備わっています。
室内機内の熱交換器(蒸発器)では熱交換器内を通過する冷媒よりも室内機内の空気の方が温度が高いため、室内機内の空気の熱は冷媒へと移り、室内機内の冷やされた空気はファンにより外に送り出されます。
室外機の熱交換器(凝縮器、コンデンサー)では室外機内へと取り込まれる空気よりも熱交換器内を通過する冷媒の方が温度が高いため、冷媒の熱が空気に移り(冷媒の冷却)、室外機内のファンでその排熱を外に吹き出しています。
そしてこの熱交換器は折り畳まれた配管と放熱フィンで構成されています。(フィン同士の間には空気の通り抜ける隙間があります)
熱交換器(空冷式)の配管内を物質が通過する際に、熱交換器周囲の空気との間で熱の移動が行なわれ(温度の高い方から低い方へと熱が移動)、熱交換が成立します。
もし室内機内のフィルターが酷く汚れていると、室内機はせっかく冷やした風を外に送り出せません。
幾らエアコン・冷凍機が一生懸命運転したところで、冷えは悪くなるでしょう。
また室外機の吸込口(空気を取り込む場所)が汚れていると冷媒は室外機で熱を放出できなくなるため、室内機で熱を受け取れなくなり、冷えは悪くなります。
室外機の吹出口(空気を排出する場所)はあまり汚れることはありませんが、吹出口の前にモノを置き塞いでいると吸い込みも悪くなるため、注意が必要です。
(冷えは悪くないとしても無題に電力を消費している可能性があるためお控えください)
2-2. 【傾向】室内機から異音がする/室外機が見た目に汚れている
原因①に当てはまる場合、室内機から異音がする/室外機が見た目に汚れている傾向があります。(ただし汚れていても異音のしないことはありますし、異音の原因が部品の不具合である可能性もあります)
そのため一つの目安として、通常の室内環境であれば2~3年クリーニングしていなければ(油の使用や喫煙環境であれば3ヶ月~半年)汚れていると考えてください。
室外機の場合もほぼ同様で、砂埃などは見た目にはなかなか分かりませんので、セットでクリーニングをお勧めします。
2-3. 【対策】サービス会社にクリーニングを依頼する
本ケースは故障ではありませんので、クリーニングにより解決可能です。
ただし業務用エアコンでは往々にして室内機が高所にあるため、自前でのクリーニングは危険です。室外機の熱交換器もデリケートな部品です。
ご自身で対応しようとせず、外部の業者に依頼されてください。もちろん有料ですが、必要経費です。
またクリーニングはクリーニング専門業者ではなく、空調全般のサービスを担う業者にご依頼されることをお勧めします。
潜在的なトラブルを抱えていた際に発見、対応してもらえるためです。
{参考:『空調・換気設備|株式会社エスディ・メンテナンス』}
3. 【原因②】冷媒量の不足
3-1. 【解説】機器が本気を出せない
原因①と双璧をなすポピュラーな原因が冷媒不足になります。
2-1章でお話ししたように、室内機と室外機の間は冷媒が循環しています。
いわば冷媒は熱の運び屋ですが、冷媒が足りないときは当然熱を十分に運べません。
「外気温が30℃くらいまでは問題ないが35℃になると冷えない」などのお悩みは、少量の冷媒不足の可能性があります。
(大量の冷媒不足の場合、気温問わず冷えないか運転が停止します)
ではなぜ冷媒不足が起こるかですが、一つには冷媒漏れがあります。老朽化による配管などからの漏れ、施工の際の漏れです。
もう一つは充填量のミスです。つまり元々足りなかったという意味です。
こちらの場合施工不良ではないかと立腹されるかと思いますが、冷媒も無料ではありませんし、(後述しますが)多い場合のデメリットもあるため実際には難しい判断となります。
3-2. 【傾向】設備の老朽化/外気温が高いほど冷えない
冷媒漏れの代表例は設備の老朽化です。施工から10年以上経つ場合は冷媒の配管が傷んできていてもおかしくはありません。
もし室外機周辺以外の場所、配管などに霜の付着が見られた際は、そこから漏れている可能性があります。
(逆に設置から間もない場合は施工不良の可能性があります)
そのほか外気温が高いほど冷えない場合は冷媒不足の傾向が見られますが、残念ながら他の原因にも該当するため以降原因③~原因⑥もご確認ください。(複合している可能性もあります)
なお複数の室内機と一台の室外機の組み合わせの場合、“冷えない”症状は同室外機の全室内機に影響します。
3-3. 【対策】修理を依頼する/冷媒追加チャージを依頼する
冷媒漏れの場合は歴とした故障になるため、施工を担当された工事会社やメーカーに連絡されてください。
冷媒漏れと断定することは専門家が現場を確認してからですが、施工不良であれば無料で修理するはずです。
設備の老朽化による冷媒漏れの場合は有料となり、なおかつ漏洩箇所の特定に難儀することがあります。
仮に漏洩箇所が特定出来たとしても何時また同じことが起きるか分からないような場合は、一式の更新も選択肢となります。
充填量のミスも同じく施工を担当された工事会社やメーカーに連絡されてください。
いきなり「冷媒追加チャージしてください」と伝えるよりも現象を説明された上で、冷媒不足ではないかと話された方がスムーズかと思います。
ただし冷媒追加チャージには費用面以外にデメリットがあります。(出張費など総額で数万円程度)
それは今後修理が必要となった際に少々面倒になることと(ポンプダウンができなくなる可能性)、高圧圧力が上昇し高圧カットを起こしやすくなる点です。(高圧圧力と高圧カットについては次章でお話しします)
現在の高圧圧力に余裕が有る場合は少量の追加も問題ありませんが、夏に問題無くとも冬に支障が起きる可能性があるため難色を示されることもあります。
現在の高圧圧力に余裕がない場合は以降の原因③~原因⑥が発生している可能性があり、高圧圧力を下げた上で冷媒を追加する必要があります。
この場合利便性から外付け熱交換器が候補となりますが、詳細は原因③~原因⑥の対策に関する記述をご覧ください。
{参考:『業務用空調機・冷機向け外付け熱交換器「BigCon」|株式会社SHOTEC』}
4. 【原因③】外気温の上昇
4-1. 【解説】室外機で冷媒の熱を十分放出できない
本章から始まる「原因③室外機周辺の高温」「原因④室外機の排熱の再吸入」「原因⑤室内機への過負荷」では前章最後に述べた高圧圧力と高圧カットが関わってきます。
そもそも室外機と室内機の間を循環している冷媒には圧力が掛けられており、特に室外機から室内機へと送られる冷媒に対する圧力を高圧圧力と呼びます。
もし外気温が上昇し(冷媒と空気の温度差が縮まり)、室外機での熱の放出が進みづらくなったとき、エアコン・冷凍機は高圧を上げて冷媒の熱の運搬能力を高めます。これは冷媒が圧力が高いほど熱の運搬能力が増すという性質を持つためです。
ただしこの高圧圧力には設備安全上の上限があり、それに達すると機器は異常停止します。これが高圧カットです。
{参考:『夏場は要注意!空調機・冷機の高圧カット対策4選 -空調機・冷機 耳より話|株式会社SHOTEC』}
そして異常停止までは至らずとも上限間近となった際に、機器が自らその運転を緩めて停止を回避する場合があります。このとき室内機から吹き出す風はぬるくなりますので、室内も冷えないことになります。
4-2. 【傾向】直射日光/コンクリート
近年は最高気温が上がっているため一概には言えませんが、単純な外気温の上昇だけで高圧がそれほど上がることは稀です。
「室外機に直射日光が当たる」「地面がコンクリート(照り返し)」のような状況の際に本ケースを疑うほか、原因④⑤⑥の傾向とも比較してください。(症状は酷似するため)
4-3. 【対策】散水装置/外付け熱交換器
最初に原因③④⑤⑥の対策はいずれも故障でないため修理で対応できないことをご理解ください。
その上で解決の方針は「室外機での冷媒の冷却を手伝ってあげること」になります。これは室外機にオプション機材を追加することで実現可能です。
このオプション機材は2種類有ります。
最も有名なものは散水装置(室外機への散水)です。散水により室外機の吸込口にある熱交換器(コンデンサー)の周囲の空気を冷やすことで、内部を通過する冷媒の冷却を進めます。
手動で散水をすることも可能ですが管理が大変なため、散水装置の導入が一般的です。
散水装置の導入コストは比較的安価ですが、排水処理・水道料金・熱交換器(コンデンサー)のフィンの劣化が課題となるほか、水を使用できない現場も少なくありません。
もう一つの対策は外付け熱交換器になります。
こちらは室外機備え付けの熱交換器(コンデンサー)では足りないと考え、外部に追加するという発想の製品です。(室外機の外に熱交換器を追加するため「外付け」熱交換器です)
散水装置より初期費用は高額となりますが、ランニングコストは一切掛かりません。
また排水がなく、スペースも取らないため、あらゆる現場でご使用いただけます。
この散水装置と外付け熱交換器については下記にまとめておりますので、そちらをご覧ください。
{参考:『空調機(エアコン)室外機への導入なら?「散水装置」VS「外付け熱交換器」-空調機・冷機 耳より話|株式会社SHOTEC』}
5. 【原因④】室外機の排熱の再吸入
5-1. 【解説】室外機が冷媒の熱を十分放出できない
原因③と似ていますが、自身または隣接する他の室外機の排熱が影響しているケースです。これを特にショートサーキットと呼びます。
原因③よりも高温になりやすく(40℃~50℃)、解決の難易度が上がります。
5-2. 【傾向】吹出口からの風の流れの先に吸込口がある/室外機周辺の風通しが悪い
ショートサーキットかどうかの判断は、ショートサーキットが疑われる室外機の吸込温度(吸込口の温度)と外気温を比較することで推測可能です。
吸込温度が外気温に対して明らかに高い場合(例えば8℃以上など)、ショートサーキットを疑います。
そのほか室外機周辺の環境からも判断可能です。
室外機の向きや周囲の建造物によって吹出口から放出された排熱がそのまま吸込口に飛び込むケース、室外機周辺の風通しが悪く放出された排熱が溜まるケースはショートサーキットと見なして良いと考えます。
5-3. 【対策】散水装置/外付け熱交換器/送風機/風のコントロール
基本的には4-3章で紹介した対策で解決可能です。
ただし散水の場合、蒸発した水蒸気により更に熱気が溜まるため、散水の時間が通常よりも長くなります。(コスト大)
外付け熱交換器は45℃以上の環境であれば風のコントロールも必要となる場合があります。
原因となっている排熱の流れを制御します。
6. 【原因⑤】室内機への過負荷
6-1. 【解説】常に室外機がフル稼働を迫られる
原因⑥室内機への過負荷とは、室内の温度上昇圧力が強く、室内機から戻る冷媒が継続して大量の熱を抱えている状況を指します。
冷房を点けた当初など一時的に冷媒が大量の熱を抱え戻るのであれば問題ありませんが、これが続いてしまうと室外機での熱の放出が追いつかなくなることがあります。
本ケースでは室内に特徴があります。
6-2. 【傾向】熱源となる機器の存在/外気の侵入/広い&高い
室内の特徴は様々ですが、大体は「熱源となる機器の存在」「外気の侵入」「広い&高い」が挙げられます。
まずは室内に(大型の)熱を発する機器がないか確認してください。工場などではその室内自体が製品などを冷ます部屋ということもあります。
次に夏場の外気の侵入は室内機にとって大ダメージとなります。ただし店舗などは分かっていても閉められないこともあります。
そして室内が広い&高いで巨大になると、冷やすことは大変です。
そのほか室外機と室内機の距離が遠いケース(配管途中で冷媒が温まる)や室外機の位置より室内機の位置が高いケース(冷媒を送りづらい)などが該当しやすくなります。
6-3. 【対策】散水装置/外付け熱交換器
室内機への過負荷を減らす工夫ができるのであればそちらでも可能ですが、難しいケースがほとんどではないかと考えます。
そのため選択肢は同様に散水装置か外付け熱交換器となります。
冷媒が室内機で大量に熱を受け取ったとしても、室外機での冷媒の冷却を支援することでカバーします。
7. 【原因⑥】機器の能力不足
7-1. 【解説】温度上昇に対し機器の性能が負けている
機器の能力不足は、圧縮機の能力不足と熱交換器(コンデンサー)の能力不足の二つに分けられます。
圧縮機の能力不足とは冷房能力(冷凍・冷蔵能力)が足りないという意味ですので、原因②冷媒量の不足と挙動が似ています。
熱交換器の能力不足は室外機での冷媒の冷却が間に合わないという意味ですので、原因⑤室内機への過負荷と挙動が似ています。
小さな能力不足の場合は、それぞれのケースと同様の対策を採ることで概ね解決可能です。
非常に稀ですが、機器の選定をしなかったなどで大きな能力不足となる場合は、解決しきれないこともあります。
8. 【原因⑦】圧縮機やセンサーの劣化
8-1. 【解説】正常に運転できなくなる
最後は故障に近い話ですが、圧縮機やセンサーが劣化した際も冷えなくなる場合があります。
圧縮機が劣化すると高圧が上がらなくなるため高温のときに冷えが悪くなりますが、最初から圧縮機を疑うことは難しく、一度専門家に見て貰うべきと考えます。
センサーは室内機と室外機に備わっており、機器の状態を監視しています。
センサーが狂うと冷えが悪くなることがありますが、こちらも専門家に見て貰う必要があります。
なお圧縮機の場合、長期間使用できなくなる上に買い換えに近い出費となるため、機器一式の更新も選択肢です。
センサーであればそこまでの金額にはなりません。
9. まとめ
9-1. あくまで参考として
以上7つの原因別に発生理由とその対策をご紹介しました。
この“冷えない”問題は難しく、サービスマンに見ていただいても診断を誤る場合も有るため、参考として活用いただけますと幸いです。
なお繰り返しとなりますが現場を確認しておりませんので、原因を断定、解決をお約束するものではありませんのでご了承ください。
長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。ご不明な点などございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。