空調機・冷機 耳より話~省エネ・不具合対策~

冬場の定番トラブル!空調機(エアコン)の霜取り運転を防ぐ方法6選

業務用空調機(エアコン)・冷機向け外付け熱交換器『BigCon』業務用空調機(エアコン)・冷機向け外付け熱交換器『BigCon』
本コラムは業務用空調機(主にパッケージエアコン)、業務用冷凍機・冷蔵機(コンデンシングユニットと呼ばれる室外機が存在するもの)を対象として執筆しております。ビルマルやチラーについても空冷式であれば概ね対象となりますが、ホームエアコンは想定しておりませんのでご了承ください。

1. 霜取り運転の基本事項

1-1. 霜取り運転の目的

 冬場の空調(エアコン)の定番トラブルが霜取り運転です。
 室外機に付着した霜を空調機自身が除去しようと、室外機内を暖めます

室外機の霜

 
 霜取り運転自体は通常の動作の範囲内ですが、霜取り運転中は暖房運転が停止するため、その頻度が問題となります。(並行運転が可能な機種も一部存在します)
 度々霜取り運転になるようでは暖房の役割を果たせませんし、定温を維持したい工場などでは極力霜取り運転を防がねばならないこともあります。

 霜取り運転を減らすことだけ考えるのであれば寒冷地エアコンやハイパワーエアコンへの移行が間違いありませんが、コスト面からその選択肢は選びづらい方も多くいらっしゃいます。

{参考:暖ガンハイパーインバーター(寒冷地向けタイプ)|三菱重工


 本コラムではそのような皆様のために、霜取り運転の対策を6種類ご紹介します。
 

1-2. 霜が付着する理由

 そもそもなぜ室外機に霜が付着してしまうのか、この理由を知っておくと対策の方向性も見えてきます。(冷房運転での霜や室外機以外に付着する霜は対策が全く異なるため別途お調べください)

 そのためまずは暖房運転の原理からご紹介し、その後霜の付着する理由をお話しします。

暖房運転のモデル

 暖房運転では室内機と室外機の間を冷媒が循環しています。
 この冷媒は熱の運搬役を果たしており、室外機(圧縮機)で(加圧され)熱を持ち、室内機へと送られ、熱を放出しています
 それにより室内機からは暖かい空気が吹き出しています。

 室内機で熱を放出した冷媒はまだ余熱を抱えていますが、このまま冷媒を再び室内機へと送り出したとしても、室内機で熱を放出できません。
 そこで室外機に戻った冷媒を(減圧し)冬の寒い外気よりも低温と変えた後に、(外気より熱を受け取り気化させた上で加圧し)高温にした上で、室内機へと送ります。

 このとき外気よりも低温となった冷媒は、(外気より熱を受け取るために)室外機外面に取り付けられている熱交換器内を通過します。
 熱交換器とはその名の通り内部と外部の間で熱を交換する、つまり温度の高い方から温度の低い方へ熱を移す機能を持った部品になります。

 暖房運転ではこの熱交換機内を冷え切った冷媒が通過することにより、外気から冷媒へと熱が移り、冷媒は加熱されるのですが、同時に熱交換器自体も冷えてしまいます。
 熱交換器は金属で出来ていますので、冷え切った熱交換器には空気中の水分が霜となって付着します

 霜が一定量付着してしまうと熱交換器はその役割を果たせなくなるため、空調機は自動で霜取り運転に移行します。

1-3. 最初に現設備の状況を確認

 ところが仮に複数の同じ空調機が同じエリアにて暖房運転を行なった場合、霜の付着量には違いが現れます。
 この違いは何か、以下の三つの要因が影響しています。

・温度(外気温と室外機周辺温度)
・空調機の能力
・室内環境

 1つ目は温度(外気温と室外機周辺温度)です。
 当然寒い日ほど霜は付着しやすくなりますが、室外機設置場所も重要です

 例えば日陰の時間が長い、寒風がよく当たるなどの場所に室外機を設置していた場合、日中から霜が付きやすくなってしまいます。
 (ただし室外機の移動は難しいでしょう)


 2つ目は空調機の能力です。寒冷地エアコンのように内蔵ヒーターがあるかどうかという話ではなく、室外機(圧縮機)のパワーです。

 冷媒は室外機(圧縮機)で加熱(加圧)されますが、一度に加熱(加圧)できる冷媒の量は室外機(圧縮機)の能力に依存しています。
 もし室外機(圧縮機)のパワーが大きければ一度に多くの冷媒を加熱(加圧)できるため、冷えた室内を早く設定温度まで上げることができます。また上げた室温も容易にキープできます。

 そして運転中、室外機(圧縮機)は常に稼働しているわけではありません
 室温が設定温度まで上がった後は稼働を休止し、室温が下がってきた際に再び稼働します。

 これは言い換えるとハイパワーの方が室外機(圧縮機)の稼働頻度が少なくて済むということです
 室外機(圧縮機)が稼働しているときに熱交換器の内部を冷えた冷媒が通過しますから、室外機(圧縮機)があまり稼働しないのであれば熱交換器もあまり冷やされなくなります。

 逆に室外機(圧縮機)のパワーが低ければ室外機(圧縮機)は常時稼働することとなり、熱交換器は常に冷やされ、霜は勢いよく付着します


 もう一つは室内の環境です。
 温度低下しやすい室内の場合(室内機が絶えずフル回転するような環境)、その分室外機(圧縮機)は運転を増やさなければならないので、熱交換器は冷やされやすくなります

 以上の内容をご参考に以降の霜対策をご覧いただくと、その趣旨が理解いただけ、応用も利くようになると考えます。

2. 室外機の霜対策3選~応急処置編

2-1. 対策の基本方針

 応急処置目的での霜対策(霜取り運転対策)方針は、「暖房運転を穏やかにする」ことになります。

 「暖房運転を穏やかにする」ことで、室外機(圧縮機)の稼働を抑制しようとする考え方です。
 こちらは比較的取り組みやすい対策となるため、こちらで急場をしのぎながら、3章の抜本的対策を採られることをお勧めします。

2-2. ①設定温度を下げる

エアコンのリモコン

 「暖房運転を穏やかにする」最も分かりやすい方法が、設定温度を下げることになります。

 ただし室外機(圧縮機)の能力がそもそも足りていない場合、あまり意味をなさなくなります。(例えば設定温度を20℃にしても荷が重いケース)
 また工場や店舗などではそもそも設定温度を下げられないことが一般的です。

2-3. ②保温を意識する(換気のやり方を見直す)

断熱シート

 室内の暖気を逃がさない、室外からの冷気の入り込みを防ぐことも効果的です。その分暖房の稼働を押さえることに繋がるためです。

 様々な方法が考えられますが、例えば断熱シートやビニールカーテンなどが挙げられます。
 これらは見た目よりも効果があります。


 また関連する話として、昨今換気を行なう機会が非常に増えたと思います
 全熱交換器のような暖気を逃がさない換気システムが備わっていれば問題ありませんが、そうではない場合、どうしても空気の入れ換えと保温はトレードオフの関係(どちらかを進めるとどちらかが退く)になります。

 そのため効率の良い換気が大切になります。僅かな換気量で継続的に実施するか、短時間に一気に換気を行なうか、の二択となります。
 どちらを選ぶかは現場に拠ると考えますが、換気を行なう場所を出来るだけ室内で暖めたい場所と離れた場所とすることで、影響をかなり制限できます。

2-4. ③暖房器具を増やす

ファンヒーター

 暖房器具(エアコン)のあるところに暖房器具を追加するという一見不可思議な話ですが、追加することで暖房の負荷をシェアすることが出来ます。
 ファンヒーターなどは手軽に導入できますし、ここまでのご紹介した処置の中では最も期待が持てます。

 欠点としては霜に悩む一時期にのみ使用するためやや勿体ない点と、設置できない現場も少なくない点が挙げられます

3. 室外機の霜対策3選~抜本対策編

3-1. 対策の基本方針

 抜本対策の方針は、「本来の空調機の能力を取り戻す」「保温しやすい室内に更新する」「室外機の耐霜性を向上させる」といったものになります。

 一通りご覧になり、ご事情に合わせた対策をお選びください。

3-2. ④クリーニングを外部委託する

室内機のクリーニング

 まず新鮮味はないかと思いますが、クリーニングの外部委託をご紹介します。
 汚れにより運転に余計な負荷が掛かっている状態であれば、こちらでの解決が可能で、比較的安価に済みます。

 クリーニングというとフィルターに焦点の当たることが多いですが、業務用室内機(エアコン)は上部に設置されているため作業に危険が伴いますし、フィルター以外の掃除も大切です。(フィルターを取り外した先にある熱交換器など)

 ですからリスクは避け、専門業者に依頼されてください。あくまで目安ですが、1年以上クリーニングを行なっていない場合、改善する可能性があります。(油を使用する環境や喫煙環境では更に短くなります

 なおクリーニングはクリーニング専門業者ではなく、空調全般のサービスを担う業者にご依頼されることをお勧めします。
 これは何かトラブルを抱えていた場合、その発見・診断も必要となるためです。
{参考:『空調・換気設備|株式会社エスディ・メンテナンス』

3-3. ⑤送風機や仕切りを設置する

 (本章は工場のような室内が広大な場合に限ります)
 暖気はどうしても上部に滞留してしまいますので、送風機で撹拌してやることで室内はより効率的に暖まるようになります。換気にとっても有効です。

 また仕切りを設置し、広大な空間を一度に暖めるのではなく個別に暖めることで、室内を早く暖めることが可能となります。
 設定温度の維持も負荷が軽くなります。

3-4. ⑥室外機にオプション機材を追加する

 空調機の能力は足りているが厳冬期は時折霜取り運転に悩まされる、といった軽度な霜取り運転対策をお考えであれば、室外機へのオプション機材の追加がお勧めです。

 外付け熱交換器は室外機の外面(吸込口)に設置し、直接(室外機側の)熱交換器を温めます。

外付け熱交換器設置イメージ

 室外機の熱交換器とこちらの外付け熱交換器は取り付け位置が異なるため、役割も全く異なります。

 室内機から戻った冷媒は室外機に入る前にこの外付け熱交換器内を通過します。このとき冷媒はまだ余熱を抱えているため、外付け熱交換器は温められます。

 外付け熱交換器も熱交換器ですので内部と外部で熱交換が行なわれます。この場合内部の冷媒の方が外部の外気よりも温度が高いため、外付け熱交換器は周囲に熱を放出します。

 外付け熱交換器は室外機吸込口の正面、つまり室外機側熱交換器のすぐ脇に取り付けますので、外付け熱交換器の放出する熱が室外機側熱交換器を“湯たんぽ”のように温め、霜の付着を抑制します

『BigCon』霜防止メカニズム

 外付け熱交換器は水も電気も使用せず、導入後は一切の手間が不要です。冷房時も変わらずご使用いただけます(省エネ効果)。
{参考:『業務用空調機・冷機向け外付け熱交換器「BigCon」|株式会社SHOTEC』

4. NGな室外機の霜対策

4-1. 室外機にお湯を掛ける

ヤカン

 逆に行なってはいけない対策として、室外機にお湯をかけることが挙げられます。お湯を掛けた瞬間は霜が溶けますが、その後すぐに水は冷え、場合によっては氷となります。
 室外機外に漏れてしまうと滑って危険ですし、室外機内に溜まってしまうと事故の可能性があり危険です。

 また水道水はミネラル成分が豊富に含まれるため、スケール(堆積物)となって室外機側熱交換器のフィンを痛めてしまいます。

4-2. 室外機に霜取りスプレーを吹きかける

スプレー

 ほかに霜取りスプレーなるものも市販されていますが、弊社が知る限り「室外機OK」を謳っている商品はありません。
 室外機には強力な電流が流れていますので、何が起きるか予測できません。そもそも空調機用でないものを使用されないでください。

5. 霜対策まとめ

5-1. まずは応急処置、あとはご事情に合わせて

 まずは1章より皆様の空調機に問題が無いか、本当に改善が必要か、ご確認ください。
 その後、2章のプランをご検討いただき、さらに抜本的に改善したい場合、3章のプランをご検討ください。


 長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。ご不明な点などございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします

空調設備・冷凍冷蔵設備に関するお悩み、お聞かせください