- 1. 霜取り運転の基本事項
- 1-1. 霜取り運転の目的
- 1-2. 霜が付着する理由
- 1-3. 最初に空調機の状況を確認
- 2. 室外機の霜対策3選~応急処置編
- 2-1. 対策の基本方針
- 2-2. ①設定温度を下げる
- 2-3. ②保温を意識する(換気のやり方を見直す)
- 2-4. ③暖房器具を増やす
- 3. 室外機の霜対策3選~抜本対策編
- 3-1. 対策の基本方針
- 3-2. ④クリーニングを外部委託する
- 3-3. ⑤送風機や仕切りを設置する
- 3-4. ⑥室外機にオプション機材を追加する
- 4. NGな室外機の霜対策
- 4-1. 室外機にお湯を掛ける
- 4-2. 室外機に霜取りスプレーを吹きかける
- 5. 霜対策まとめ
- 5-1. まずは応急処置、あとはご事情に合わせて
1. 霜取り運転の基本事項
1-1. 霜取り運転の目的
冬場の空調(エアコン)の定番トラブルが霜取り運転(デフロスト運転)です。
霜取り運転とは室外機吸込口(剥き出しの、灰色の網のような部分)が霜で覆われ暖房運転に支障が生じた際に、室内の暖房を一時中断し霜を溶かすために室外機を暖める特別な運転になります。(並行運転が可能な機種も一部存在します)
霜取り運転は正常な運転中でも起こるものですが、頻繁に繰り返すようであれば不具合と判断されます。(とはいえ故障とは判断されません)
霜取り運転を減らすことだけ考えるのであれば寒冷地エアコンやハイパワーエアコンへの移行が間違いありませんが、一般的にコスト面から選びづらい選択肢です。
{参考:暖ガンハイパーインバーター(寒冷地向けタイプ)|三菱重工}
本コラムではそのような機器の入れ替え以外で可能な霜取り運転対策を6種類ご紹介します。
1-2. 霜が付着する理由
そもそもなぜ室外機に霜が付着してしまうのか、この理由を知っておくと対策の方向性も見えてきます。(冷房運転での霜や室外機以外に付着する霜は冷媒漏れなど故障の可能性が高いため別途お調べください)
そのためまずは前提となる暖房運転の原理からお話しします。
暖房運転では室内機と室外機の間を冷媒が循環しています。
この冷媒は熱の運搬役を果たしており、まず室外機(圧縮機)で(加圧され)高温となった冷媒が室内機へと送られ、室内機内で熱を放出することにより室内機からは暖かい空気が吹き出しています。
室内機で熱を放出した冷媒を再び室外機から送り出すためには、(減圧し外気温を利用して冷媒を暖め気体に変えた上で)再び室外機(圧縮機)で(加圧され)高温にする必要があります。
この中で冷媒は(減圧時に)瞬間的に外気よりも低温となっており、室外機外面に取り付けられている熱交換器内を通過する際に外気によって暖められます。
熱交換器とはその名の通り内部と外部の間で熱を交換する、つまり温度の高い方から温度の低い方へ熱を移す機能を持った部品になり、この熱交換機内を冷え切った冷媒が通過することにより、外気から冷媒へと熱が移り、冷媒は暖められる仕組みです。
しかしこのとき金属で出来ている熱交換器は冷やされますので、空気中の水分が霜となり熱交換器に付着します。
霜が一定量付着してしまうと熱交換器は冷媒を暖めるという役割を果たせなくなるため、空調機は自動で霜取り運転に移行します。
1-3. 最初に空調機の状況を確認
霜取り運転が頻発する際は、以下の三つの要因について確認してください。
・室外機周辺温度と陽当たり
・空調機の能力
・室内環境
1つ目は室外機周辺温度と陽当たりです。
当然寒い日ほど霜は付着しやすくなりますが、室外機設置場所も重要です。
例えば日陰の時間が長い、寒風がよく当たる場所に室外機を設置していた場合、日中から霜が付きやすくなってしまいます。
(ただし室外機の移動は難しいため2章以降で紹介する方法をお試しください)
2つ目は空調機の能力です。寒冷地エアコンのように内蔵ヒーターがあるかどうかという話ではなく、室外機(圧縮機)のパワーです。
勘違いされがちですが、運転中、室外機(圧縮機)は常に稼働しているわけではありません。
室温が設定温度まで上がってきた後は運転中であっても(圧縮機の)稼働率が減少し、室温が下がってきた際に再び活発になります。
この稼働率に影響を与える空調機の能力が室外機(圧縮機)になり、室外機(圧縮機)の能力が高いほど一度に加熱(加圧)できる冷媒の量が大きいため、相対的に稼働率が抑え気味になります。
室外機(圧縮機)の稼働中だけ冷えた冷媒が熱交換器の内部を通過しますから、室外機(圧縮機)があまり稼働しないのであれば熱交換器もあまり冷やされなく霜は付きにくくなります。
逆に室外機(圧縮機)の能力が低ければ室外機(圧縮機)は常時稼働することとなり、熱交換器は常に冷やされ、霜は勢いよく付着します。
もう一つは室内の環境です。
温度低下しやすい室内の場合(室内機が絶えずフル回転するような環境)、その分室外機(圧縮機)は運転を増やさなければならないので、熱交換器は冷やされやすくなります。
以上の内容をご参考に以降の霜対策をご覧いただくと、その趣旨が理解いただけ、応用も利くようになると考えます。
2. 室外機の霜対策3選~応急処置編
2-1. 対策の基本方針
応急処置目的での霜対策(霜取り運転対策)方針は、「暖房運転を穏やかにする」ことになります。
「暖房運転を穏やかにする」ことで、室外機(圧縮機)の稼働を抑制しようとする考え方です。
こちらは比較的取り組みやすい対策となるため、こちらで急場をしのぎながら、3章の抜本的対策を採られることをお勧めします。
2-2. ①設定温度を下げる
「暖房運転を穏やかにする」最も分かりやすい方法が、設定温度を下げることになります。
もし室外機(圧縮機)の能力が不足気味にも関わらず設定温度を高く設定してしまうと、いつまでも室内が設定温度に到達せず常に空調機が稼働することになるため、余計に霜が積み重なってしまいます。
2-3. ②保温を意識する(換気のやり方を見直す)
室内の暖気を逃がさない、室外からの冷気の入り込みを防ぐことも効果的です。その分暖房の稼働を押さえることに繋がるためです。
様々な方法が考えられますが、例えば断熱シートやビニールカーテンなどが挙げられます。
これらは見た目よりも効果があります。
また関連する話として、昨今換気を行なう機会が非常に増えたと思います。
全熱交換器のような暖気を逃がさない換気システムが備わっていれば問題ありませんが、そうではない場合、どうしても空気の入れ換えと保温はトレードオフの関係(どちらかを進めるとどちらかが退く)になります。
そのため効率の良い換気が大切になります。僅かな換気量で継続的に実施するか、短時間に一気に換気を行なうか、の二択となります。
どちらを選ぶかは現場に拠ると考えますが、換気を行なう場所を出来るだけ室内で暖めたい場所と離れた場所とすることで、影響をかなり制限できます。
2-4. ③暖房器具を増やす
暖房器具(エアコン)のあるところに暖房器具を追加するという一見不可思議な話ですが、追加することで空調機の負担をシェアすることが出来ます。
ファンヒーターなどは手軽に導入できますし、ここまでのご紹介した処置の中では最も期待が持てます。
欠点としては霜に悩む一時期にのみ使用するためやや勿体ない点と、設置できない現場も少なくない点が挙げられます。
3. 室外機の霜対策3選~抜本対策編
3-1. 対策の基本方針
抜本対策の方針は、「本来の空調機の能力を取り戻す」「保温しやすい室内に更新する」「室外機の耐霜性を向上させる」といったものになります。
一通りご覧になり、ご事情に合わせた対策をお選びください。
3-2. ④クリーニングを外部委託する
まず新鮮味はないかと思いますが、クリーニングの外部委託をご紹介します。
汚れにより運転に余計な負荷が掛かっている状態であれば、こちらでの解決が可能で、比較的安価に済みます。
クリーニングというとフィルターに焦点の当たることが多いですが、業務用室内機(エアコン)は上部に設置されているため作業に危険が伴いますし、フィルター以外の掃除も大切です。(フィルターを取り外した先にある熱交換器など)
ですからリスクは避け、専門業者に依頼されてください。あくまで目安ですが、1年以上クリーニングを行なっていない場合、改善する可能性があります。(油を使用する環境や喫煙環境では更に短くなります)
なおクリーニングはクリーニング専門業者ではなく、空調全般のサービスを担う業者にご依頼されることをお勧めします。
これは何かトラブルを抱えていた場合、その発見・診断も必要となるためです。
{参考:『空調・換気設備|株式会社エスディ・メンテナンス』}
3-3. ⑤送風機や仕切りを設置する
工場のように室内が広大な場合は暖気が上部に滞留してしまいますので、送風機で撹拌してやることで室内はより効率的に暖まるようになります。
換気にとっても有効です。
また仕切りを設置し広大な空間を個別に暖めることで、室内を早く暖めることが可能となり、設定温度の維持も容易になります。
3-4. ⑥室外機にオプション機材を追加する
空調機の能力は足りているが厳冬期は時折霜取り運転に悩まされる、といった軽度な霜取り運転対策をお考えであれば、室外機へのオプション機材の追加がお勧めです。
外付け熱交換器は室外機の外面(吸込口)に設置し、自身がヒーターとなることで直接(室外機側の)熱交換器を温めます。
室外機の熱交換器と外付け熱交換器は熱交換器という意味では同種ですが、取り付け位置が異なるため役割も異なります。
室内機から戻った冷媒は室外機に入る前にこの外付け熱交換器内を通過します。このとき冷媒はまだ余熱を抱えているため、外付け熱交換器は暖められるという原理です。
単に暖められると言うだけでなく、外付け熱交換器は内部の方が外部よりも高温の場合に周囲に熱を放出するという性質があるため、裏側にある室外機の熱交換器を効果的に暖めます。
外付け熱交換器は水も電気も使用せず、導入後は一切の手間が不要です。冷房時も変わらずご使用いただけます(冷房時にスイッチをオフにする操作が必要となる場合があります)。
{参考:『業務用空調機・冷機向け外付け熱交換器「BigCon」|株式会社SHOTEC』}
4. NGな室外機の霜対策
4-1. 室外機にお湯を掛ける
逆に行なってはいけない対策として、室外機にお湯をかけることが挙げられます。お湯を掛けた瞬間は霜が溶けますが、その後すぐに水は冷え、場合によっては氷となります。
室外機外に漏れてしまうと滑って危険ですし、室外機内に溜まってしまうと事故の可能性があり危険です。
また水道水はミネラル成分が豊富に含まれるため、スケール(堆積物)となって室外機側熱交換器のフィンを痛めてしまいます。
4-2. 室外機に霜取りスプレーを吹きかける
ほかに霜取りスプレーなるものも市販されていますが、弊社が知る限り「室外機OK」を謳っている商品はありません。
室外機には強力な電流が流れていますので、何が起きるか予測できません。そもそも空調機用でないものを使用されないでください。
5. 霜対策まとめ
5-1. まずは応急処置、あとはご事情に合わせて
まずは1章より皆様の空調機に問題が無いか、本当に改善が必要か、ご確認ください。
その後、2章のプランをご検討いただき、さらに抜本的に改善したい場合、3章のプランをご検討ください。
長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。ご不明な点などございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。





